赤ちゃんにハチミツは絶対ダメ!乳児ボツリヌス症と危険性

一歳未満の赤ちゃんにハチミツを食べさせてはいけないことをご存知ですか?
昔のことですが、ハチミツを豊富な栄養源として子供になめさせていた時代がありました。
ですが近年、ハチミツの中から検出される細菌である「ボツリヌス菌」により、乳児ボツリヌス症が引き起こされることが判明し、一歳未満の乳児に与えないように注意が促されています。
今回は、乳児ボツリヌス症と赤ちゃんに与える影響についてご紹介します。
目次
なぜ乳児にハチミツを与えてはいけないの?
ハチミツと言えば、美容に良かったり、体内で早く吸収されるため身体によさそうだったり、健康的でプラスなイメージがありませんか?
自然な甘さで栄養価も高いため、赤ちゃんの離乳食に使ってみたいと思うママもいるかもしれません。
実際、ママの親世代やその上の世代から勧められたことがある人もいるようです。
ですが、ちょっと待ってください。
実は一歳未満の赤ちゃんにハチミツを与えることは、とても危険なのです。
2017年3月、日本国内でもハチミツを摂取したことによりボツリヌス菌に感染し、乳児ボツリヌス症になってしまった赤ちゃんが死亡するという痛ましい出来事がありました。
乳児ボツリヌス症とは、いったいどんな病気なのでしょうか?
ボツリヌス菌と乳児ボツリヌス症
乳児ボツリヌス症を引き起こすボツリヌス菌は、元々どこにでもある細菌です。
主に土や河川、海などの自然界に広く存在しています。
周囲をバリアで覆った芽胞(がほう)という状態の時には、増殖能力は低下するものの熱に強く、アルコールなどで消毒しても、死滅させることは難しいといわれています。
このボツリヌス菌は、酸素が多いところが苦手で、逆に酸素の少ないところでは次々と増殖し、毒素を発生させます。
乳児の赤ちゃんは普段、土に触れたり、河川に入ったりすることはありませんよね。
離乳食開始後もしっかりと洗浄された野菜を与えられますから、日常生活でボツリヌス菌に感染することは滅多にありません。
ただ、ボツリヌス菌の芽胞が紛れ込みやすいハチミツや黒糖などの食品によって、赤ちゃんの体内に運ばれてしまった場合は、赤ちゃんにとってとても危険です。
というのも、一歳未満の乳児、つまりまだ腸の発達が不完全で、腸内環境が整わない赤ちゃんの体内は、ボツリヌス菌にとっては非常に活動しやすい環境にあるからです。
体内に入ってしまったボツリヌス菌は、腸内で増殖し、毒素を出します。
その毒素によって引き起こされるのが「乳児ボツリヌス症」です。
乳児ボツリヌス症とは?赤ちゃんの身体にどんな症状が?
実は、初期症状として多く見られるのは何日も続く便秘です。
もちろん、この段階で家族が「乳児ボツリヌス症かも!」なんて気づくことは不可能に近いです。
症状が進むと不機嫌になったり、症状が進むにつれて哺乳力が低下していきます。
でも、便秘が続くと赤ちゃんは不機嫌になることがありますし、おっぱいやミルクもあまり飲んでくれなくなるので、ここまでの症状では気づきにくいかもしれませんね。
その他にも
-
泣き声が小さくなる
-
顔に表情がない
-
瞼のあたりが腫れぼったい
-
いつもできていたことが出来ない(寝返り、ひとり座りなど)
-
今まですわっていた首がだらんとしている
-
手や足がふにゃふにゃしている(麻痺している状態)
のような症状が現れ始め、筋肉への麻痺が強くなると呼吸するときに使う筋肉にも影響を及ぼすため、最悪の場合は呼吸困難に陥り、命にかかわります。
異変を感じたらすぐに医者にかかるようにしましょう。
授乳中のママがハチミツを食べたらどうなる?
ボツリヌス菌による感染の怖さは上に記したとおりですが、感染することはごく稀です。
1986年に初めて日本でハチミツを摂取したことによる乳児ボツリヌス症にかかった赤ちゃんが発見されました。
そのすぐ翌年に、当時の厚生省(現・厚生労働省)が「1歳未満の乳児にハチミツを与えてはいけない」と周知したこともあり、ハチミツが原因による乳児ボツリヌス症は2017年まで報告されていませんでした。
実際にアメリカの統計によれば、乳児ボツリヌス症による死亡率は1%未満だということです。
ですから、ハチミツや黒糖を食べさせていないのであれば、必要以上に心配する必要はありません。
もし授乳中にハチミツをママが食べたら、おっぱいを介して赤ちゃんに伝わってしまうんじゃないの?
そう思ったママはいませんか?
安心してください。
大人の免疫はしっかりしているので、菌は取り込まれることはなく、母乳を介して赤ちゃんに感染することはありません。
赤ちゃんも一歳を過ぎるころには腸内環境も整い、抵抗力がついてきますから、離乳食に隠し味として使うこともできるようになります。
一歳過ぎるまでは赤ちゃんのご飯にハチミツや黒糖を使わないこと。
ママがそう決めていても、例えばたまたま与えた市販品にハチミツが使われていた、なんてことにならないよう、赤ちゃんに食べさせるものはしっかりと原材料や製造元を確認しましょう。
ハチミツに対する意識の世代間ギャップ
今もハチミツと言えば美容や健康にいいと話題に上る食材ですが、昔は栄養価が高く、甘みの強いハチミツは赤ちゃんにも与えられていました。
育児をしていて、多々感じることがあると思います。
「昔の常識が今の常識に当てはまるわけではない」
例えば離乳食の進め方。
アレルギーの概念がほとんどなかった昔より、研究が進んだ今はとても慎重になっています。
育児をしてきた人は、自分が育児をしていた時期に常識として広められていたことを、現代も引き継がれていると信じて疑いません。
「祖父母が赤ちゃんにハチミツをあげようとした!信じられない」 なんて声を耳にしたことがあります。
決して悪意があるわけでなく、知識のすれ違いから生じてしまう衝突は、とても悲しいことですね。
現在市販されているハチミツの容器には、必ず「一歳未満の乳児に与えないで下さい」と注意書きが書かれています。
もし親やその上の世代が赤ちゃんにハチミツをあげようとしていたら、ボツリヌス菌の危険性を知らせてあげてください。
中には、昔は赤ちゃんにあげても平気だった、という意見も散見されますが、知られていないだけできっと赤ちゃんがボツリヌス菌に感染したケースもあったと思われます。
ハチミツを食べた乳児全員が感染するかといえばNoです。
昔は現代より赤ちゃんの死亡率が高く、原因が特定できるものも多くなかったため、乳児ボツリヌス症の影響かどうかが特定されなかっただけだと考えられます。
善意の行き違いなので、真っ向から否定するのではなく、「赤ちゃんへの気遣いは有難いけど、腸の発達が未熟な乳児の身体にはまだ毒なんです」などと、やんわり説得できるのがベストですね。
まとめ
いかがでしたか? 乳児ボツリヌス症は、まだ腸内が未発達な一歳未満の赤ちゃんにハチミツや黒糖など、菌の付着している可能性があるものを与えなければ心配する必要のない病気です。
ただ、世代によっては赤ちゃんにハチミツを与えることを勧めてくる方もいるので、注意が必要です。
万一乳児ボツリヌス症が疑われる全身脱力や便秘などの症状があれば、最悪呼吸困難で死に至るケースもあるので速やかにお医者さんにかかりましょう。
また、赤ちゃんに市販品を与える場合は、組成表示や原材料をしっかりと確認してからにしましょう。
他にもいろいろあるのでこちらを参考にしてみてください。